さて、最近話題となっているので自作される方も多くなるかもしれない。ということで早々に解説しておこうと思います。
回路図

回路図はこんな感じです。というかこれ、完全にアレですよね。最後の方に書いておきます。
どうやら4ノブバージョンでもあるのか、反転増幅回路のところに付け足すようなことが書かれていますね。画質が若干粗いですが、切り取って見ていきましょう。
入力部・歪み回路
しかしなぜブティックメーカーはバッファ抜きのトゥルーバイパスが好きなのか。まぁ作るのが簡単になるからか、本当に音が良くなると思っているのかでしょうが、普通に音が劣化するだけなので自作上級者の方はTS808みたいにバッファードバイパスにMODしてみてください。ワンランク上のGainsterになります。

R1とか番号振ってないですね。幸いにもパーツ点数が少なかったのが救いでしょうか。
ではまずインプットの100nと書かれたコンデンサから。これはこの回路に入る音の帯域を決めるものですが、その後にある1Mとハイパスフィルタを形成しています。その極は1.5Hzと相当低いです。0.01μF程度でも影響はありません。
10kは入力保護用ですが、直流電圧からの保護ではなく過大入力からの保護です。ここまでの抵抗値は必要なく、雑音を考慮すると寧ろ数kΩに留めておきたいところです。音量に差が出るのみなので、数kΩ(例えば1kΩなど)に変えてしまってください。
1MΩはバイアス用です。ちょうど電源部も入っているので書いておきますが、電源部のNと書かれているところと1Mは繋がっています。電源部のNと書かれたところは9Vを分圧した4.5Vが取り出されています。オペアンプの電源は9Vなので、0Vとの中間の電圧である4.5Vを信号ラインにかける事で信号が上下に振幅出来る、という仕組みです。
なので間違ってGNDに繋いだりすると音が出ませんね。

次は歪み回路です。
よくあるTS系の歪み回路ですね。クリッピングダイオードの1N914が奇数なので、非対称クリッピングになっています。
120pFのコンデンサは発振防止だったり、次段に送る信号の帯域を決めています。好みで変更してもOKです。元の容量の倍程度ずつ増やした方が変化がわかりやすいです。
その下の10kΩはゲインの最低値を決めています。
1N914の左下に1kΩがあるので、Presenceを絞った時の最低ゲインは
10kΩ/1kΩ=10
なので10倍になります。
一方Presenceが9kΩ以上の時は1倍のバッファとして機能することが分かります。
ゲインツマミは1MΩとかなり大きめです。DODも確か1MΩだったと記憶していますが、ゲイン最大時には相当な増幅率ですね。
(1000+10)/1=1010
なので1010倍の増幅率です。当然ノイズも増幅されるのでかなりノイズが増えてしまいます。クリッピングさせたいならダイオードを変更するようにと前々から言っていますが、今回もそれです。
一方Presence最大の時には、
(1000+10)/26=38.8…
と、あまり高い増幅率ではありません。
Presenceによってかなり増幅率の変わるエフェクターだと分かります。
一方で、気に入ったPresenceとゲイン量は両立出来ない可能性がある、という事にもなりそうです。似た回路ではゼンドライブがありますね。
1kΩの下にある47nFのコンデンサはどの帯域を歪ませるか、というものですが、容量を増やすほど低域が増えていきます。ここはMODの定番なので、並列にコンデンサを増やすスイッチを付けてみたり、容量を減らしてみたりなど、工夫のしがいはありそうです。
低倍率増幅回路・出力部

前段で歪んだ音は10kを通ってオペアンプに入っていきます。
これは反転増幅回路といって、歪み回路の非反転増幅回路とはまた違った増幅回路です。位相が反転してしまうので、そのあたりにこだわりを持つ方は要注意です。
ここの増幅率は帰還内の22kΩと10kΩによって決まります。
22kΩ/10kΩ=2.2
なので約2倍です。
一見低倍率ですが、前段の増幅した信号×2倍となるので、トータルではかなり大きめの音量が予想されます。
2.2nFのコンデンサは次段に送る帯域を決めています。ここも容量を変えてみるのは定番ですね。
それから4ノブバージョンの回路ですが、出力に信号をブレンドするような回路です。が、1MΩは大きすぎですね。ただ音色に関わってくる部分なので、抵抗値の根号に比例する物理的に回避不可能なノイズが許容出来るならこのままでも良いでしょう。
個人的には一番試行錯誤したい箇所です。工夫次第では別物になるでしょう。
最後は500kΩの可変抵抗で分圧されて出力です。しかし、500kΩは無いですね。アンプメーカーの作るエフェクターにありがちな、不適切なまでの高抵抗の採用です。
多分Bottomも自社かどこかのメーカーのアンプから引用したものでしょう。
それか使用している年代的にFuzz Faceの回路でも参考にしたのかもしれませんが、わざわざハイインピーダンス出力にするなど意味不明です。10kΩの可変抵抗に変更しましょう。
それに合わせて100nは1μFのフィルムコンデンサに変更です。後の機器からの保護用として1kΩも直列に入れておくと良いでしょう。
しかし、このエフェクターの後に長めのシールドを繋いでいる方は相当なハイ落ちに悩まされていそうです。
クローンであるGainsumoも同じ抵抗値を採用しているなら、同じくハイ落ちに悩まされそうですね。もし持っている方がいらっしゃればお聞きしたいところです。
改善したいならバッファが必須です。
電源部

最後です。ここも改善が必要ですかね。
電源ジャックが書いて無ければまだよかったですが、スイッチング電源の多い昨今こんな電源回路ではノイズに悩まされます。
回路の方はオペアンプを使う回路でお馴染みの、ただの分圧回路ですが、平滑コンデンサすらないのはいかがなものかと思います。
電源ジャックの後にCRフィルタを追加するべきでしょう。既に作ってしまったということなら、サイズ的に220μFの電解コンデンサを電源ラインからGNDに入れてください。
逆接続防止用にダイオードも無いので、これも付けておきたいですね。
あとは製作編でも書きましたが、50μFの電解コンデンサにこだわる必要はありません。信号ラインならまだわかりますが、電源部なので容量も近い値で良いですし、メーカーにこだわるなど無意味の骨頂です。
47μFの、ニチコンやルビコンあたりのコンデンサにしてください。
おまけ
最初に書いていた、アレ、についてですが、ある程度回路図を見てきている人ならもう分かっていると思います。

若干本物とは違いますが、そうですね。BOSSのOD-1です。

どうでしょうか。ほぼOD-1ですよね。違いと言えばPresenceぐらいで、その他はちょっと定数が変更してある程度です。寧ろ500kΩの可変抵抗に改悪してあったり、電子式スイッチやバッファの恩恵が受けられない分、下位互換と思う方もいる事でしょう。
ブティックも蓋を開けてみればBOSSだった、なんて珍しい話ではないので結局BOSSが最強説が立証されてしまった感はあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
Gainsumoを作ろうとGainsterを作ったら実はOD-1だった、とは何とも言えませんね。エフェクター業界の縮図みたいですねという鋭いツッコミが入りそうですが、まぁそんなものです。
BOSSエフェクターだけあって音色はお墨付きなので、ぜひ作ってみてはいかがでしょうか。
個人的にはバッファを搭載してほしいなと思います。その他改善点も、悪くなることは無いのでやってみてください。
最後まで読んでくださってありがとうございました(^^)/
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