【実際それってどうなのか】ギターのトーンコントロールに最適なコンデンサは?

ギターについて

皆さんは何のコンデンサを使っているでしょうか。

ギターの内部回路にはトーンコントロール用のコンデンサが入っている事は、ある程度ギターベースをされている方ならご存知ですよね。

王道のオレンジドロップ、勝るとも劣らない人気のビタミンQ、ビンテージ志向の方はセラミックコンデンサ。コンデンサ?そんな物知らん、等々色々あると思います。

という事で今回はギターのトーンコントロールに最適なコンデンサは何なのか、それを議題として色々書いていこうと思います。

実はとあるコミュニティでギターのコンデンサについての質問があったので、回答したついでにまとめてみる事にしました。まぁ最近は毎回それなんですけどね。ネタを探す手間が省けるので( ̄▽ ̄;)

そもそもトーンコントロールとは

初心者の方から経験者の方まで読める記事を書くようにしているので、既にご存知の方は飛ばして頂いて大丈夫です。

まずギターやベースの内部にはコンデンサと可変抵抗からなるトーン回路が内蔵されています。

コンデンサを介してアースと書かれている電位的に0Vに不要な高域を落とす事でハイカットをしている、というような回路です。

https://www.esp.ac.jp/club_esp/maintenance/lecture16.html

こんな感じでハイカットフィルタを形成しています。超単純な回路なだけに、耳の良い方ならコンデンサの違いが聞き分けられるとかなんとか。

なので実際その辺はどうなのかという話をしようという記事です。

一応想像しやすいように予備知識としてオレンジドロップやビタミンQという有名なコンデンサの画像を貼っておきます。

https://www.guitarworks.jp/shop/item/guitar/picture/goods/1250_2_expand.jpg

某コンデンサが使われるようになった理由

私の知る中では大きく分けて2つ理由があります。恐らくこのどちらか、或はどちらもが理由でしょう。

1つ目は、エレキギターが登場した当時は真空管による大電圧真っ盛りの時代。今でこそIC半導体用に耐圧の低いコンデンサやパーツこそあれど、当時は高耐圧の物しか無かったからという理由です。

なのでFender等はちょうどアンプに使っているアンプ用コンデンサを、入手性や値段の関係上流用したという説です。

そして2つ目の理由は性能の問題です。オレンジドロップは昔のコンデンサの中では非常に優れた高域特性を持ち、それが評価されていました。これが伝説となり今も使われている、そんな話です。ただ技術は常に進歩するもので、現在では並の性能です。

今や数十円の国産コンデンサの足元にも及びません。

ただしカップリング用途と違い、倍音カットとして使われる分には高域特性のみ見れば必要性はあまり無いように思います。

耐圧の噂

耐圧が高い方が性能が良い、みたいなのも稀に聞くので一応言及しておきます。

耐圧に関しては、性能が高くなると耐圧も高くなる傾向にありますが、耐圧だけで性能の善し悪しは計れないです。

高耐圧ならば高性能であるは成り立たないという事ですね。

オレンジドロップの耐圧は600Vですが誘電正接は0.034、一方ある国産フィルムコンデンサだと630V耐圧で誘電正接0.001という性能ですから文字通り桁違いの性能です。

●定格電圧:600V
●静電容量:0.047μF
●静電容量誤差:±5%(J)
●使用温度範囲:-40~+85℃
●最大誘電正接:0.034(@20kHz)
●リード線:錫メッキ銅クラッド鋼 / 直径0.8mm、AWG#20
●アプリケーション:エレキギター、オーディオ等

オレンジドロップ ポリプロピレンフィルムコンデンサ 600V 0.047μF
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共立エレショップさんのオレンジドロップの性能についての抜粋です。果たしてオーディオ用と言える性能なのか…微妙です。

値段も後者の方が100円程度なので500円以上するオレンジドロップなど使う必要性は無いでしょう。

ただしこの性能の差を聴覚上聞き分けられるかは不明です。そして観測者が人間である以上そこには心理が介入するのでプラシーボ効果も有り得るのです。やるならブラインドテストですが、わざわざ性能の悪いコンデンサと良いコンデンサの音の聴き比べを人を集めてするには如何せん生産性に欠けます。まあ暇ならやってみたい程度ですよね·····

とは言えこういった小さな積み重ねが音色の向上に貢献するのも確かです。1つ変えたところで劇的に変わる事は無いですが、こんな細かい箇所を何十、何百と拘れば差が出てくるのは明白です。

コンデンサの種類による違い

オレンジドロップはポリプロピレンフィルムコンデンサ、ビタミンQはオイルペーパーコンデンサ、初期フェンダーにはワックスコンデンサ、無駄に値段の高いぼったくりのバンブルビー等々、これらは総じてフィルムコンデンサなので大差は無いです。

強いて言えば昔のコンデンサなので現代のコンデンサに比べて結構性能が悪い。後はビタミンQやバンブルビーならオイルコンデンサなので容量抜けが起こるポンコツコンデンサである可能性がある程度でしょう。

50以上のコンデンサを試したという方がいらっしゃいましたが、結局違いは分からなかったという話も聞きました。

なので比べるならフィルムコンデンサとセラミックコンデンサという事になるでしょう。

ある程度知識のある方なら信号ラインにセラミックコンデンサを使うなんて論外!非常識!とか聞こえてきそうですが、そうとも言いきれないかもしれないのがギターベースの世界です。

性能が低い方がビンテージの音がして良いというような趣味の世界ですからね。

ギターの弱奏時におけるセラミックコンデンサの振る舞い

ここからは少し突っ込んだ話をします。コンデンサの種類解説記事の補足でもあるかもしれませんね。

まずセラミックコンデンサはフィルムコンデンサと違い誘電ヒステリシスが顕著である事は既に書いたと思います。

一般にセラコンがオーディオ回路に合わないというには、セラコンの強誘電体特有の角形性ヒステリシスが原因です。

角形性ヒステリシスを描かないセラコンもありますが、ギターに使われているセラコンの容量であれば大抵角形性ヒステリシスを描きます。

この角形性ヒステリシスは微弱信号では事実上静電容量が少なくなったような振る舞いをします。そのため弱奏時やサスティーンの後半等、微弱信号用時にはハイカットが小さくなるという現象が起こります。

ただしこれはピックアップのコイル巻数が比較的少なめで、共振周波数の高いシングルコイルである必要があるので果たしてそこまで設計されているかを考えると微妙な気もします。ですがそこまで考えられた設計であればビンテージトーンも狙って出せるという事ですね。

とは言えこのような特性上、ビンテージトーンを出したいならセラコンを使うというのは結構効果的であるという事になります。

セラコンとフィルムコンは聞き分けられたという方もいらっしゃるようですし、これで分からなければビンテージもモダンも変わらんと割り切る切っ掛けにもなったりするかも知れませんね。

一応再三書いておきますが、ビッグマフ等の古いエフェクターにセラミックコンデンサが大量に使われているのはまた別の話で、オーディオマニアの方の、信号ラインにセラコンなんて有り得ない!論外!非常識!という主張は十分認められますからね。性能重視の方であればそういった商品には手を出さない事をお勧めします。営業妨害で訴えられそうですね。

個人的な見解

ここまで来て話の腰を折るとか有り得ないと思うんですが、この時代にギターにパッシブのトーンコントロール用コンデンサを内蔵するのは懐疑的派です。

新興宗教なのでビンテージ部品カルト否定派宗教と合わせて入信者募集中です。

それでその内容ですが、非常に単純です。

ギター側でトーンをカットしてエフェクター、アンプで高域をブーストするのは合理的ではないからです。

考えてみると変な話ですよね。

合理的ではないだけかよっ、て突っ込まれそうなのでデメリットを挙げるとギター側でハイカットしてアンプやエフェクターで高域をブーストしようものなら、それに応じた耳障りな雑音が発生します。

なのでギターにパッシブトーン回路を内蔵するのはアン直派ですら良くないですし、いっその事ギター側のトーンコントロールは要らないのではとすら思います。

とは言え手元でトーンを調節したいという需要もあるでしょうから、そんな時はアクティブトーン回路を内蔵してしまえばローインピーダンス出力の絶大な恩恵も得られて一石二鳥です。

どうですかね。入信したくなったでしょうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

こんな感じで今回はギターのコンデンサのみに絞って書いてみました。アンプやエフェクターも含めるととんでもない文章量になってしまうあたり、コンデンサというのは奥の深いパーツです。

結論としてはフィルムコンデンサであればオレンジドロップやビタミンQ、バンブルビーのような高いコンデンサを買う必要性は無い。買うなら国産のフィルムコンデンサであれば同等かそれ以上の性能であることが多い。

ビンテージを狙うならセラミックもアリと言えばアリだが、個人的にはあまりお勧めはしない。というような感じですかね。

ビンテージパーツ信者の方には申し訳ない回となってしまいましたが、他ではあまり触れられていない分野だと思うので参考になればと思います。

最後まで読んでくださってありがとうございました(^▽^)/

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コメント

  1. アバター 神保町太郎 より:

    こんちには。楽しい記事きましたね!

    僕は昔から、ギターについてるトーンをちょこちょこ触る人は名手だ!みたいな言説にはかなり懐疑的でした。

    音にこだわる人ほどそんなことをしますよね(たとえばマ○ケルランドウ。かの有名なJanRayを絶賛してしまった張本人。ギタリストの中でも耳がいい(とされている)ランドウがいうならJanRayは間違いない!とお墨付きを与えてしまった。というのは悲しき余談)。

    でも普通に考えて、音の電気信号が発生するど頭のところでハイをカットしてうしろでハイをブーストあるいは調整するみたいなことはとってもナンセンスだなあと。

    ということで、入信者第一号です笑

    • ぷらむ ぷらむ より:

      いつもご覧いただきありがとうございます*_ _)
      早速のご入信ありがとうございます笑
      マ〇ケル氏のようなプロギタリストに限ってプラシーボである可能性は否定したいところですが、付け替えて音色を評価出来ているようなら本当に違いが聴き分けられる耳の持ち主なのかもしません。
      こういった例もあるのでコンデンサによる音色の違いは無いと一概には否定出来ないのが難しいところです。ジャンレイについてもただ好みだったという事なら説明は付いてしまいます。
      ただしトーンコントロールがパッシブである必要性は、ギターまでも回路として広い目で見られる方なら既に気づいている事かもしれませんね。
      私含め初心を忘れてしまった技術者では見向きもしない部分が問題だったりします。

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