製作日記27 多分今まで一番苦労したエフェクターと、その他色々のご報告

こんにちは。未だにご覧になっている方がいるのか不明ですが、お久しぶりです。ぷらむです。

お前全くブログ更新してないじゃないか、という声が聞こえてきそうですが、ぶっちゃけてしまうと仕事の方が忙しく、しかも身体的な方で通院に加え精神の方もやりかけてしまうという、結構ギリギリな状態だったという諸事情があります。

とは言えお引き受けしていた製作依頼は、なんとか済ませていっているので、セーフとさせてください。

暗い話から始まって申し訳ないですが、早速タイトルの今まで一番苦労したエフェクターについて話しつつ、後半には告知的な事をしていこうと思います。

ネタバレ感は否めませんが何を苦労したのか外観から予想してみるのも一興かと思いまして、完成品はこちらです。

自作されている方にしか伝わらないかもしれませんが、相当大変でした。

中身の方は、昨今人気な(最近Twitterを見ていないので今の流行りは正直よく分かっていません)myriadの改良バージョンです。

まず苦労ポイントその①は、シールですね。

一応製作日記にするつもりで作っていたので、エクセルよりワードの方がいいかと思ってワードで作ってみました。(ちなみにシールのデザインはご依頼者様が作られたものです。お世辞抜きに完成度が高く、こちらの身も引き締まる思いでした。最初は大変さ故お引き受けするか迷っていましたが、相当な熱量が伝わってしまったのでお引き受けしたという裏話的なのもあります)

こんな感じで印刷する用紙の大きさに合わせて、シールの画像を貼り付けするだけです。

だけなんですが、この後が大変でして、あまり写真を撮れていないんですが、周囲の散らかり具合的に相当な回数やり直したのがお分かりいただけると思います。多分10回以上はやり直しています。

イラストを入れたりは基本レタリングシートだったので、シールの難しいこと。

ちょっとズレても貼り直せばいいと思うでしょうが、剥がすと折れ目が付いてシワができてしまうんですよね。なので一発勝負です。何度もやり直して、奇跡のテイクを狙うしかない、そんなイメージです。

メルカリで有名な某ハンドメイドペダルを販売されている方はシールですが、よく正確に貼れるなぁと改めて実感しました。型とか使ってるんですかね。

使ったシールは下記の用紙ですが、普通はインクジェットだと思うのでご注意ください。

そして苦労したポイントその②が、アクリル板です。

ご覧の通り、全面にアクリル板をネジ止めしているのですが、これがまた大変です。

天面だけというのはメーカー品でもたまに見かけますが、全面というのは見たことがないです。それこそ完全オーダーメイドでもするしかないでしょう。とは言うものの、果たして引き受けてくれる工房はあるのか、作った大変さを実感している身としてはやや懐疑的です。そもそもお仕事としてやっている工房なら利益を追求しなければならないので、引き受けなさそうですよね。やはりこういうのは自作の強みだと感じます。

購入したアクリル板は下記の商品ですが、大きさは完全に間違えました。この1/4ぐらいで十分です。厚さは完璧でしたが、大きすぎると処分に困るのでご注意ください。

それで具体的に何が大変だったのかと言うと、エフェクターのケースというのは完全な直方体ではないのです。

若干の傾斜がついていて、アクリル板もそれに合わせて若干の傾斜を入れる必要があります。

こればかりはカッターで切っただけで合わせられるものではないので、サンドペーパーで六枚のアクリル板をひたすら削って形を整えました。

注意点としては、あまり強くネジ止めするとアクリル板が割れてしまうので、少し軽めにネジ止めするのがポイントです。

私は裏蓋のアクリル板をネジ止めした時割ってしまって、精神崩壊しかけたのでご注意ください。

あと自作において一番大変なのはケースの穴あけです。ケースだけならまだいいですが、アクリル板だと穴あけは2倍になる上、バラバラなのでケースとはまた違った正確な穴あけが求められてこれがまた大変です。

そして色々工程を経てこのように完成した、という感じです。

仕事等もあるので常に作っていたわけではないですが、根を詰めて作って一週間以上かかりました。

いつもなら設計で1、2週間ほどゆっくりかけて(後々良いアイデアが浮かぶことがるのでゆっくりめにしています)、根を詰めて2、3日とかで仕上げるので、どれだけ大変だったか分かるでしょうか。

シールのサイズの微調整だったり、アクリル板の大きさを決めたり、色々含めて相当な時間がかかった一台です。

時給換算するとエフェクターにしてはとんでもない額になりそうですが、生々しい話をすると3万円程でお引き受けしました。(実はご依頼者様はVirtues monicaを貸してくださった方で、そのお礼としてassh minicaを差し上げる予定でしたが、その分の代金もという事でキリの良い3万円になりました)

こういう珍しい仕様のエフェクターだと、私も見積もりが甘くなるのでお得かもしれません。ちなみにアクリル板全面、シールも全面張りは本当にしんどかったので多分もうお引き受けしないと思います。そもそもご覧の通り材料費もバカにならないので利益など無いに等しいです。

という事で、振り返ってみて色々策を思いついたといいますか、

これに近い物を作りたい、そんな方にはやはりシールではなくレタリングシートをおすすめします。

シールと違って貼り付けた後でもある程度位置調整が出来ますし、塗装のような仕上がり(この辺は好みですが)になります。

そしてアクリル板も天面だけをお勧めしたいですが、外装の強度を求めるならウレタンクリアがおすすめです。

こういうやつですね。

すぐに使い切る必要はありますが、強度は自作エフェクターでよく使われるアクリルクリアよりかなり上です。

大手メーカー品だとウレタンクリアの物も多く、なかなか良い仕上がりになります。

多分同じものを作る方はいないと思いますが、アクリル板、シールを使ったエフェクターの大変さが伝わればと思います。

しかし完成した時の達成感は凄まじかったですね。後半になるにつれ、本当に完成するのか心配になるまでありましたが、完成した時はこんなに頑張れるものなのかと感動しました。

そしてご依頼者様も満足いただけたようで、レビューもしてくださいました。

ブログを書く上で参考にになれば、との事でしたが、かいつまんで書くより原文そのままが一番でしょう。

M○riadクローン3ヶ月半使った感想とハマってるセッティング Feelは歪み量がと何かが変わってる感じするけどちょっと難しいから基本MAXにしてます。 BIASは多少ブチブチ側に寄らせると良い感じにファズ感出てきて気持ちいい。遊ぶ余地大! Fuzzは歪み量と言うより低音の出方とブチブチ感に関わってくる感じなのでこのくらい上げるとギター単体の時めっちゃ気持ちいい。 MAXまで上げても凶悪な音になって良いし絞っても割と真っ直ぐな音になってこのツマミが1番いじってて楽しいです。 TONEはFuzzと合わせて適宜調整する感じで使ってます。好みでいろんな音に変えられるはず!

LEVELは本家と比べてちょっと動かすだけで爆音になるという事はないです。でもoff時とon時で音量差無くす分には半分も回さないで足りるからむしろ使いやすくて良いんじゃないかなと思ってます。

ギターのボリュームを絞った時の音はカラッとしていて癖になる感じです。ただギターによっては完全なクリーンまで落ちないかも。パシフィカとジャガーでは落ちましたがハム系とテレキャスでは落ちませんでした。ただピッキングの強さでもだいぶ歪み量は変わるのでそこは腕でカバーできる範囲かと。

自分の場合はVirtuesのmonica(黒)かBD-2を前段に置いて使ってますがオーバードライブ足すとそのペダルの 個性も加わって更に色々な音が出せます。monicaの場合は太くて温かみもあるディストーションって感じになり、BD-2の場合は更にバリバリとしたディストーションとファズの間という感じの音に。

それぞれのペダルのセッティングによってもまた音が変わりますし、クリーンに落とした時の音も変わるので中々飽きる事は無さそうなのでどんなボードにも一台入れていて損はない割と万能なエフェクターかなと思ってます。

色々な人がやってる本家レビューとほぼ同じような事言ってる気がするけど実際使っててそう思ったんだから完成度高いって事だよね〜本当に無限大の使い方があります!

との事でした。文章量もさることながら、やはりここまでエフェクターに熱意を持って向き合うのはなかなか出来るものではないと思います。

私の方からも少し言わせていただくと、Levelをちょっと動かしても爆音にならない、というのは本家と可変抵抗のカーブを変えているというのが要因です。

人の聴覚というのは一次関数的ではなく、指数関数的なもの。つまり可変抵抗にするとBカーブではなくAカーブです。この辺り本家はBカーブなのでセンスが無いなと思うのですが、やはりAカーブの方が使いやすいようですね。

他にも本家はLevelの抵抗値が高すぎて、これではアンプまで数メートルシールドを引き回すと、聴いて分かるほどハイ落ちが起こります。

非常識と言わざるを得ない設計ですが、この辺も適切な抵抗値にしてあります。恐らくmyriadの音量が大きく、低めの抵抗値だと音が漏れ出てしまうことから高めの抵抗値にしたのだと思いますが、音量のツマミを0で使う事なんて無いですよね。

なので少々漏れても問題なく、ハイ落ちしないような抵抗値にしたい、というのが個人的な意見です。

そしてギターの種類によって歪み具合が違うというのも重要なポイントです。多分ギターの音量を絞ったおかげで入力の信号レベルが低くなって歪まなくなったのだろう…そう考える方も多いかと思います。

しかし実際にはそう簡単な話でもなく、ギター側のボリュームを調節するとインピーダンスの変化が起き、それに起因する歪みの変化が起こっています。ギターの種類と言うより、ギターの出力インピーダンスによる違いという事ですね。この辺りもゆくゆくは解説したいところですね。相当難解な話になってしまいますが。

ということで、この話はこんなところにしておこうと思います。

さて、次の話は冒頭で申し上げた告知についてです。

結論から言ってしまうと、Sweet Mead Overdrive(確か去年ぐらいに設計しますと言ったような)というエフェクターが完成したので、試奏動画が完成したらお引き受け開始します、という告知です。

Twitterの方でも告知はしてみたものの、ああ、例のあれが完成したんですね、みたいなコメントは無かったので多分本当に誰も覚えていないどころか、認識すらしていない説はあります。(しかし驚くことに、ブログをご覧になっている方が覚えていたようで、Twitterで告知した翌日にご依頼をいただきました)

一応どんなエフェクターなのか、紹介しておこうと思います。

名前からお察しでしょうが、Sweet honey overdriveが元ネタになっています。

結局パクリエフェクターじゃないか、そう思うのも無理はありませんが、これについては話が違いまして、Sweet honey overdriveというエフェクターは非常に惜しいエフェクターなのです。

それこそ本領を発揮できていない、ダイヤモンドの原石のようなものです。

正直言ってしまうと、ブラッシュアップしてみたいと思ったのはケンタウルスとSweet honey overdriveと、その他少数です。

なので今回は手始めにある程度音色の保証されているSweet honey overdriveをブラッシュアップしてみよう、そういう魂胆です。買う側としては、無名のエフェクターよりは幾分安心かと思った次第です。

具体的にどういったところをブラッシュアップしたのか、大きく分けると2つあります。

まずSHODの自作解説でも書いたような気がしますが、9Vという電圧では正常な動作が出来ているとは到底言えない設計です。それこそ元々の設計は12Vや18V程度の高めの電圧での設計ではなかったのか。

Madprofessorは大手のエフェクターメーカーなので、売り上げを考慮すると大半のパワーサプライの供給電圧である9Vに合わせざるを得なかったのではないか、と思っています。

なので電子回路の土台である電源回路から作り直し、電源ノイズも可聴域に追い出す事で超低雑音に抑えています。要するに雑音があるなら聴こえないレベルの周波数に上げてしまえ、そういうことですね。

そして2つ目は、設計者がやりたかった設計が、言い方は悪いですが実力不足で出来ていないのではないか。これについてもSHOD解説記事で記載していますが、設計がちぐはぐな印象です。

多分真空管アンプのエミュレートを目指したのだろうと思いますが、先ほど述べた電圧の件も含めイマイチ実現できていません。特にバイアス抵抗などは、試行錯誤の跡が見て取れます。多分設計している内にどうすべきか分からなくなったのでしょう。

一方でトーン回路の方はとても興味深く、相当こだわったのだと思います。なのでトーン関連には手を付けず、文字通り本来の性能を引き出す方向で設計し直しました。

しかしこれだけではインパクトに欠けるので、目玉の機能としてクリッピングを切り替えるスイッチ、そしてMeadという歪みに関するツマミも追加しています。

Meadって何って思うかもしれませんが、

全くその通りだと思います。

このツマミのネーミングには結構悩みました。なぜなら市販品には同じような機能のツマミが無いからです。

なのでエフェクター名から取って名付けた、そんな感じです。洒落ていて悪くないのではないでしょうか。

機能としては、歪み量のミックスですね。元々トーンも歪みもミックスする設計なんですが、更に歪みのミックスに重点を置いた、そんなイメージです。歪みエフェクターでミックスと言うと、ケンタウルスに近いものを感じますが、こういったところも惹きつけられるところです。

なお試作品は完成して弾いてみたのですが、想像以上の仕上がりでした。まぁ作った本人が言ったところで信じれるか、というのは私も思うので試奏動画なりで良さそうだと思えばご検討ください。まぁちょっと凝った料理を作ってみたら我ながら美味しく作れて思わず、うまっと言ってしまった、そんな感覚です。

ただ想定外だったのは、歪みエフェクターと言うより小型のプリアンプっぽくなってしまった事。

それからアンプのセッティングはゲインチャンネルより、クリーンチャンネルの方が相性が良いという事ですね。

クリーンチャンネルの方が相性が良い、つまりピッキングニュアンスが諸に出てしまうので、上級者向けのエフェクターになってしまったという事です。(そもそもMeadとかいう意味不明なコントロールがあるので、少なくともエフェクター初心者向けではないかもしれません)

悪い事ではないかもしれませんが、出来れば万人受けな方針で作りたいものです。

しかしこれが完璧だと感じた仕上がりなので、致し方なしです。

なお台数はどれぐらい作れるのかという事については、当初5台程度としていましたが、運よくパーツが手に入ったので数十台は作れそうです。パーツの数的には。

ただし作るのが相当大変でして、ポンポンと作れるものでもないので少数になります。

まぁ50台とかましてや数百台レベルで依頼が来る事なんて無いと思うので、必要十分な台数を作ろうと思います。

SHODの真価を見たい、そんな方はご依頼ください。

それから、次に設計するエフェクターはディストーションにしようと思います。

正直ディストーションでぱっとするエフェクターって無いですよね。(個人的な感想です)

「ローゲインなオーバードライブと言えば!」

「「「V〇muramu j〇n ray!!!」」」

と全会一致出来ますが、ディストーションは結構割れると思います。RATとかRIOTなどなど。

なので、自分用に完璧なディストーションを作るついでに、欲しい方がいらっしゃれば製作依頼ということでお引き受けしようと思います。

そもそもSMODも自分用にというコンセプトで作っているので、やはり製作者用というのが一番信頼できるのではないでしょうか。

一応既に設計の構想は固まっていて、Twitterでもついでに告知していますが、

普通の歪みエフェクターはクリッピングが100%が限界です。しかし私が設計したディストーションは、100%を超える限界突破したクリッピングが可能です。という事はハイゲイン?となるかもしれませんが、このディストーションの真価はクリッピング波形を自在に変えられることにあります。それこそSin波に近いクリッピング波形、つまりローゲインもいけます。

多分高調波の処理で手を焼くことになりそうなのでそれなりに時間はかかりますが、そのあたりも煮詰めていきたいところですね。

という事で告知も以上となります。

次の製作日記ネタも用意しているので、たまに見に来ると更新しているかもしれません。

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コメント

  1. アバター 匿名 より:

    初めまして。いつも楽しくフンフン頷きつつ、拝見させて頂いております。

    全面アクリル保護は本当に大変ですね!木材よりもシビアに扱わないといけない繊細さが拝見できます。

    さて、どうしてもコメントしたくなるネタがあがっていましたので、書き込ませて頂きました。
    記事に上がておりますエフェクターのデザイン、これ「Doki Doki Literature Club!(ドキドキ文芸部)」ってゲームが元ネタですよね。しかも割と後半に出てくるネタバレ感の強いパワーワードで笑っちゃいました。
    ゲーム界隈では文ドキ(と略されます)のキャラクター「モニカ」にハマっちゃった人達を「Just Monikaおじさん」と呼びます。私もそのうちの一人です。

    ぷらむ様も、もしご興味がございましたらご覧になって頂ければ幸いでございます。
    いきなりオタク特有の早口コメント、失礼致しました。

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