Cry Babyの自作、製作編に続き恒例の回路解説です。
Cry Babyは見た目の割にかなりカスタマイズ性のある回路なのでぜひ参考にしてください(^▽^)
ついでに結構重大な設計ミスもちらほらあるのでそちらも参考にしていただければと思います。
回路
海外のサイトにちょうどよさげな回路図があったので引用しました。
有名なエフェクターはこんな感じで載っていたりします。
画像で部分的に分けられているので今回は画像は分けずにいきます。
入力部
オレンジで囲んであるInput Bufferと書いてあるところですね。
順に右へ解説して、最後は電源部を書きます。
まずCin1ですが、これはどれぐらいギターの音を通すか、というコンデンサなのでここを弄ると結構変わります。ベース用に改造するなら0.033μあたりが良いらしいですね。
ギター用なら0.022μまでがおすすめです。
Rin1はよくあるスイッチを押したときのバチンノイズを抑える抵抗です。
Cin2はラジオなどの無線が入らないようにするコンデンサです。セラミックかマイカがおすすめですが、セラミックがいいでしょう。
その後の回路はよくあるエミッタフォロワのバッファです。
実はCry BabyはVOXの改良版ペダルだったりします。
ご覧の通り入力バッファが無く、それ以外はクライベイビーと同じです。
VOXのワウはこのままだとインピーダンスの都合上相性問題と呼ばれる現象が発生します。それを半分ほど修正したのがクライベイビーです。
本来VOXワウには出力部にもバッファを設けるべきなんです。
自作を嗜んでいる程度でも分かる人には分かるレベルの設計ミスです。
ワウ回路
どういう名前にすればいいのか微妙だったんですが、心臓部ということでワウ回路にしておきます(;^ω^)
回路図だとactive filterと書いてありますね。直訳だと能動的なフィルター回路になりますが、可変フィルター回路ぐらいがしっくりくるんじゃないでしょうか。
①R1はバッファードバイパスではなくトゥルーバイパスにしたときに音量差を調節する抵抗として知られていますね。
47kにするとオンオフ時の音量差が無くなります。
その次からがフィードバックを備えたエミッタフォロワのブースターになっています。
Cry Baby系のワウってかなり難解な回路なので回路の知識が無いと少々難しいかもしれません。
②R2はMIDをブーストする抵抗として扱われていますね。ぐ具体的にはQ値のピークに達するまでのリニアさを調整できます。メーカー品でもここがトグルスイッチで切り替えられるようになっているものもあります。
1.5k~2.5kの可変抵抗にする、という方法があります。
3k台は少しやりすぎかもしれませんが、もし2.5kの可変抵抗が欲しいという場合は、二連の5k可変抵抗を並列にすると可能です。
③R4はブーストする帯域のピーク位置を変えられます。
150R~390Rぐらいがいいでしょう。ただここは可変抵抗にするとノイズが出るので、トグルスイッチか、ロータリースイッチにすると良いかもしれません。個人的には接点ノイズがでるので固定抵抗をおすすめします。
④R7はボーカルモッドなんて呼び方をされています。
20kから、中には100kほどの可変幅に改造している方もおられるようですね。
20kの時R4が390Rだと最適値というのが通説なので、ここを可変にするならR4もスイッチで切り替えできるようにすると便利です。
⑤C2は可変帯域のピーク値とそれ以外の帯域のギャップを調節できます。要するに、ここを大きくすると周波数のピーク周辺のみ突出するという尖った音になります。
逆に小さくするとピークと周辺の周波数がなだらかになるのでぼやけた音になる可能性があります。まあ程々に、というところでしょうが、ここもトグルスイッチやロータリースイッチで変えてみると面白いでしょう。
もし切り替えにする場合、スイッチだと切り替え時に回路が一瞬浮いてしまうのでコンデンサを並列にしてどちらか片方だけ切り替えるようにしましょう。
だいぶ適当ですが、今回に限らずコンデンサを切り替える時はこうするようにしましょう。
例を挙げると、クライベイビーなら0.001μを常に繋いでおいて、0.01~0.1μのコンデンサを並列に入れる、という感じです。
勿論一段ではなく二段、三段と重ねて切り替えスイッチをつければ細かく設定もできます。
出力部
そろそろ遡るのもしんどくなってきたと思うので、もう一度添付しておきます。
出力部はOutput Stageと書いてある部分ですね。
出力回路というのは回路から信号を取り出す部分に繋がなければならないんですが、ご覧の通りなんか変なところに繋がってませんか?
回路が分からなくても変だと感じた方は正解です。
本来出力回路はQ2のエミッタに繋がっているべきなんですよね。そうすればローインピーダンスで出力できます。
前述した通りクライベイビーはワウワウさせるために信号をフィードバックする回路があります。そこに出力回路を直接繋いでいるという、電子回路の初歩を学んでいればあり得ない回路です。
これは普通では考えられない設計ですが、エフェクターではOKになってしまうんですよね。
ちなみにこれがFuzz Faceと相性が悪い原因です。長くなってしまうのでこれはまた別の記事で書こうと思います。
JIM DUNLOPは入力部しかバッファを設けておらず修正出来ているのは実質半分と言ったところです。これを分かっていたのかどうか怪しいところではありますが、修正するのは簡単で単に出力前にバッファを増設すればいいだけです。
どうせならMPAS18で揃えてもいいと思います。MPSA18はhFEが高いから、古いから違うものに~というのを見かけたことがありますがローノイズで高性能なトランジスタなので十分です。
他にも、入力部と出力部でバッファを設けるという事なら二回路入りのオペアンプを使う手もあります。ローノイズ選別品の4558DDやTL072等なんでも大丈夫です。
電源部
220μの電解コンデンサと0.1μのセラミックコンデンサ、そしてツェナーダイオードだけというとても簡単な電源回路です。
Fuzz Face等と同様にCry Babyも電源ノイズを受けやすく、この電源回路でアダプター駆動させるには心もとない回路ですね。
本来は電池のみでの駆動をおすすめしたいところです。
まず電源回路を修正する前にツェナーダイオードは取っ払ってしまいましょう。
9Vまでの電圧保護は無くなりますが、正直最近の電源機材なら心配ないです。
逆接続防止用のみで大丈夫なので他のエフェクターでよく見る、1N4001や4007を電源とGND間に入れるか、電源に直列に入れるかして対応してください。
本題の電源回路ですが、220μと0.1μの前に電源部に直列に220Rを入れましょう。抵抗、電解コンデンサ、セラミックコンデンサのセットを一段と数えて最低で二段は重ねましょう。
ケース内に余裕があるならもっと増やしてもいいです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
なかなか作り甲斐のあるエフェクターだと思います。
エフェクターはワウだけ!なんていう方も多いので、そんな方にこそ自分だけのワウを作っていただきたいですね。
最後まで読んでくださってありがとうございました(^▽^)/
コメント