【回路解説+更新】設計ミスあり?Sweet honey overdriveの自作

前回の製作編に続きいつもの回路解説をしていきます。クローン対策がされていて実機通りに作るには少々ハードルの高いエフェクターですが、面白い回路なので参考にしていただければと思います。

回路図

これがSweet honey overdriveの回路図です。

パッと見IC1AあたりはオーバードライブによくあるTS系っぽいですが、その後にディストーションのようなクリッピング回路があったりとなんだかややこしい回路ですね。

実はダンブルアンプをシミュレートしたエフェクターらしいですが、動作的には多段のクリッピング回路にる比較的なだらかな歪み発生回路になっています。

とても特徴的な回路ですが、中でもFocusというツマミはこのエフェクターの肝だと思います。

入力部

もう解説不要かもしれませんが、一応です(;^ω^)

R3はスイッチ切り替え時のバチンというノイズを抑える抵抗です。

C1は回路にどれぐらい低域を通すかを決めるコンデンサです。直流をカットする役割もありますが、音には関係ない部分です。

0.0047μとかなり小さいですね。音の印象がかなり変わってしまうかもしれませんが、増やすなら1μを限度に調節してみるといいかもしれません。

増幅段

ここの増幅段もよくあるTS系の回路ですね。

オペアンプの負帰還にLEDをクリッピング用ダイオードとして入れています。

C15は発振防止用なのでなるべくオペアンプに近い場所に配置しましょう。

最大ゲインは

R9+500k/R17=503

最小ゲインは

R9/R17=3

と言った感じで、なかなか可変幅の広い増幅段です。ですが実はLEDのクリップする振幅に達しません。なのでこのLEDは普通に作れば無意味です。

実機を測定していないので何とも言えませんが、クローン対策ではないかなと思っています。半導体メーカーに振幅の大きいオペアンプだけ納品させるので同じ型番を使ってもちゃんと動作しない、というやつですね。よくある手法です。

ちなみにクリッピングさせたいからと言ってDriveを1Mになんてことはしないようにしましょう。三流製作所にもっと歪ませたいと依頼するとこういった手法をとってきますが、増幅率が増える分ノイズも大きくなります。

ちゃんとした技術者ならダイオードのクリッピング特性で歪みを変えます。やるならダイオードを変えましょう。

あとは最低ゲインが低いのでR9を50k前後を限度に調節すると良いかもしれません。

R17を10k~50kの可変抵抗にするとゼンドライブのVoiceみたいに働いてくれます。

R18とC10はフィルター回路になっています。R18を可変抵抗にして、C10も調整すればトーンツマミとして機能させる事もできます。

トーン回路

ここがスイートハニーオーバードライブの肝となる回路です。なかなかややこしい回路をしていますね。

まずはオペアンプから送られてきた信号は増幅されいていた場合D6、D7でクリッピングされます。

実はD6,D7の順方向電圧よりLEDの方が高い順方向電圧なので、二重の意味でLEDって意味ないんですよね。分かりやすく言うと、頭と足をチョンパされたおっさんが広い道を通ったところで体は元に戻らない、みたいな感じです。意味不明ですよね。それぐらい意味不明な回路なんです。

なんでそんな設計になっているのか、多分多段クリップさせたかったんでしょうが、多段クリップの知識はあるのにダイオードを選ぶ知識は無かったとかなんですかね…?色んなエフェクターがありますがトップレベルで謎です。

そしてR10、R16を通って後半へと送られています。

帰還回路と勘違いされる方が技術者でも結構いらっしゃるみたいですが、よく見ると抽出した帯域をミックスしています。

この辺は一番MODが一やすい箇所ですね。C6を増やせば低域を増やせますし、スイッチで切り替えにするのもいいでしょう。

ただ下手に弄りすぎると原型が無くなってしまうので、コンデンサは並列に増設する等工夫が必要です。

クリッピング、出力回路

出力前のオペアンプの負帰還にもダイオードを入れてクリッピングさせている面白いエフェクターですね。

増幅段のクリッピング回路、トーン回路前のディストーションによく見られるクリッピング回路、そして今解説中の部分を合わせると計3つもクリッピング回路を持っています。

最初にも書いていますが、多段の歪み回路を持っているおかげで本当に真空管アンプに近い歪みを生み出せる仕組みになっています。

ここは特に目新しい回路でもないですが、2倍弱の増幅をして出力となっています。

C4はなるべくオペアンプに近く配置し、セラミックにしましょう。

C9はファズフェイスなどの古い機材と組み合わせないなら1μのフィルムコンデンサの方が高性能になります。電解コンデンサを使う場合はタンタルコンデンサにしましょう。

電源部

どこで回路の問題点について書こうか悩みましたが、電源にも関する部分なのでここで書こうと思います。

とりあえず回路的にはフィルター回路と分圧回路を組み合わせたもので、歪みエフェクターなら大体これです。

改良するならフィルター回路を2段にする、C14を47μにする、あたりが簡単に出来ます。オペアンプの電源とGNDピンに0.1μのセラコンを直付けとかも良いと思います。

それで本題(?)の問題点ですが、オペアンプの選定が微妙です。

というのもLEDをクリップさせるにはかなりの振幅が必要なんです。スイートハニーオーバードライブに使われている赤色LEDがクリップするには2Vも振幅が必要です。

一方使われているオペアンプ、OP275の出力はというとかなり増幅しないとそこまでの出力は出来ません。

要するに出力が低すぎて初段は歪まないという事です。

他にも駆動電圧が±4.5V~18Vなのでかなりギリギリの動作をさせていたり、そもそもオペアンプの性能的にノイズが大きい部類のオペアンプです。他の汎用オペアンプの方がまだいいですね。性能面での選択で言えば設計ミスレベルです。

特にハイインピーダンスな信号を扱いがちなエフェクターには向かないでしょう。

他に使えるオペアンプなら探せばいくらでもありますが、応急処置としては18Vへの昇圧はかなり効果が見込めます

今回は特殊な例で、大抵の歪みエフェクターは昇圧しても大差のないことがほとんどです

スイートハニーオーバードライブはかなり凝った回路で設計者がオペアンプの選択ミスをするとは考えにくいのですが、もしかするとクローン対策の都合上このオペアンプになったのかもしれませんね。だとしても、もう少し性能の良いオペアンプを選びたいところですが真相は謎です。

トーン回路の複雑さは感覚で作り上げた説も無きにしも非ずですけどね…

まとめ

いかがでしたでしょうか。

少し問題はあるものの、稀に見る非常に作りこまれたエフェクターだと思いました。単なるTSの定数変更が多い昨今ですが、その名に恥じぬ名器の素質を秘めた回路でしたね。

個人的にはクリッピング回路とかオペアンプとか、色々改良すればかなり化けるのでは、とも思っています。感覚的に性能の2割も出せてないですよあれは。ちなみに2割はトーン回路です。

本家は少々お高めですが、JOYOからクローンが出ているみたいです。

本家は高くて手が出ない…という方でも試しやすい価格だと思います。

最後まで読んでくださってありがとうございました(^▽^)/

コメント

  1. Mata より:

    コメント失礼します。
    Twitterにもコメントしましたが、sweet mead overdriveの購入は可能でしょうか。

    • Mata より:

      まだ諦めておりません!
      ご返信お待ちしております。

      • ぷらむ* ぷらむ* より:

        ご返信が遅れてしまい、申し訳ありません。ご依頼についてですが、TwitterのDM履歴が消えてしまっているので、お手数をおかけしますが改めてご連絡いただけますと対応可能です。ご不便をおかけします。

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