皆さんシールドとかパッチケーブルってどこのメーカーのを使っていますかね。
カナレにベルデン、モガミ…etc
選んだ基準は音が良い、柔らかくて使いやすい、太い方が音が良さそう?
色々ありますが、今回はそんなケーブルの話をしてみようと思います。
シールドとは
このブログは初心者の方から機材上級者でもある程度楽しめる記事であることがテーマの一つなので、そもそもシールドってなんやねん、という話をしておきます。
シールドとはギターケーブルの総称です。
正式名称のシールデッドケーブルを略してシールドです。
構造的にはエフェクターを繋ぐパッチケーブルもシールデッドケーブルですが、ギターのケーブルはシールド、エフェクター間を繋ぐケーブルはパッチケーブルという使い分けをされています。
構造は全く同じなので、ギターのシールド用として売られているケーブルもパッチケーブルとして問題なく使えます。
シールドの構造
まずはシールデッドケーブルの構造について紹介します。いきなりシールドの本格的な話をしても、基礎が固まっていなければ小手先の知識でしかありません。
前項で書いた通り、シールドの正式名称はシールデッドケーブルです。
名前の由来はご存じでしょうか。
名前の通りシールドされているケーブル、つまり守られたケーブルという事ですね。
何から守られているか、それは外来磁力線や無線など所謂ノイズから守ってくれています。
一人暮らしをしたことがある方やご家庭のお父さん方なら同軸ケーブルと言うと何か分かるのではないでしょうか。
そうですね。テレビのアンテナケーブルです。あれもシールデッドケーブルですよ。テレビの信号を外来電波等から守っているので安定してテレビが見られます。
具体的な構造はこうなっています。
中心にある心線を網目状の銅線が覆っているような構造ですね。パッチケーブルとかシールドを自作したことがある方なら分かると思います。
この網目状の銅線がシールドの正体です。
ギターシールドは心線をギター信号が通り、シールドがGNDと繋がっています。
つまり外部ノイズはシールドによって遮られ心線に届くことなくGNDに吸収される、そんな感じに考えていただけると分かりやすいです。
なのでシールドのノイズの強さはシールド線の被覆率が重要というわけですね。
線間容量
万物はいかなる物も抵抗値を持ち、静電容量を持ちます。
導電率が一番高い銀も抵抗値を持ちますし、抵抗器もコンデンサのように静電容量があります。
という事はケーブルにも抵抗値があり、静電容量があります。
抵抗値があるのは当然でしょって感じですが、ケーブルがコンデンサのように静電容量があるのは意外ではなかったでしょうか。
ケーブルのような線材の持つ静電容量を線間容量と呼ぶんですが、これが原因でハイ落ちというあまりよろしくない現象が起こる時もあります。
http://www.mogami.com/mit/jp-catalog.pdf
https://catalog.belden.com/techdata/EN/9395_techdata.pdf
添付したURLはMOGAMIとBeldenのデータシートです。データシートを読むのはなかなか苦痛だと思いますが、より良い設計をしたいなら見る癖を付けましょう。
ブティックメーカー等アマチュアの作ったメーカーはどうにもデータシートを見ずに設計している感じがするので如何なものかと思いますが、データシートは超重要です。
今回は私が一部抜粋して記載します。
まずMOGAMIは自作ギターシールド用ケーブルで検索すると一番上に出てくる3368にしましょう。
Beldenは手に入りやすい中で一番性能の良さそうな9395にしましょうか。
MOGAMI3368の線間容量は70pF/m(21.4pF/Ft)で、
Belden9395の線間容量は55pF/Ftです。
MOGAMIと比べてBeldenは2倍以上の線間容量があるのが分かりますね。
何が問題かという話ですが、エフェクターの回路でトーン回路はコンデンサと抵抗で形成されていますよね。という事はケーブルの線間容量もトーン回路のようになって意図しない音の変化を招いてしまいます。
計算式は略しますが、MOGAMI3368だと23kH程度、Belden9395だと8.8kH付近でそれぞれ3dBほどのハイ落ちになります。
人の可聴域は20kH程度なのでMOGAMI3368のハイ落ちは問題になりませんが、Belden9395だと思い切りギターの帯域です。
MOGAMI3368等は外皮と心線が擦れた時に発生する静電気を逃がす仕組みを作っています。カナレもMOGAMIとは違う技術で静電気を逃がしています。
一方Beldenはそんな手法を取っていないので、ケーブルとしての性能は雲泥の差です。
ギター機材関連ではよくあるカルト的なメーカー信者でしょう。性能ではなくメーカーをありがたがる良い例です。
もちろん実際にベルデンのケーブルは音が良いと感じるから使っているという事なら感性の問題なのでそれはそれで良いと思います。やはり機材の性能に納得できるかどうかなので、性能が優れているからといってMOGAMIやカナレなどを使う必要性はありません。
私がケーブルのオーダーメイド販売をするならまずベルデンはリストに入れませんが、大抵の自作販売はベルデンが主流のようでどうにも腑に落ちませんね。
ケーブルの闇かもしれません。
ケーブルの迷信
太い方が音が良い、あのケーブルはローが良く出る、やっぱりBeldenは音が良い、二心ケーブルの方が音が良い…etc
どうでしょう。盲目的に信じるのもそれはそれでいいのかもしれませんが、科学的に基づいて議論すると前項のようになります。
太い方が音が良いというのは恐らく導体の面積が大きい方が抵抗値が低いという事から来た話だと思いますが、導体が太ければ太いほど線間容量は増加します。
他にも二心ケーブルを単心ケーブルとして使うあり得ない迷信も広まっていますね。
二心の内片方をシールドとはんだ付けして使うらしいですが、こんなことをすると前項で紹介したBeldenとは比にならない程線間容量が増加し、ハイ落ちします。
そもそも二心ケーブルはステレオでマイクケーブル用ですからね。ギター用ではないです。
あと少数ではありますが、ビンテージシールドは音が良いという、これまた絶対あり得ない主張を見かける事もあります。
近代的なシールドと1960年代、1970年代付近のギターケーブルはそもそも構造が異なり、性能も比較するまでもなく近代的なシールドの方が高性能です。
ツイストケーブルも見かけますが、シールド線には勝てません。スピーカーケーブルで有名なBeldenウミヘビ等が良い例でしょう。
ケーブルの選び方
もうご理解頂けたと思いますが、ブログでよくある「2021年のおすすめケーブルランキング!」あそこのメーカーのこのケーブルはこんな音で…
という科学的根拠に欠ける話はしません。
ケーブルの選び方は、ケーブルの品番からデータシートを調べ各値を見て数値を算出し、ギター、ベース用途に適しているか見極める。これだけです。
被覆率の高さ、線間容量、ケーブルの柔軟性、その他色々、これらを総合的に比べて優れているケーブルを買うべきだと思いますが、どうでしょう。
他にもエフェクターボードを組んで欲しいという依頼が来た時は上記の要素を全て加味した上でケーブルを選びますが、磁力線の影響を受けにくい配線方法、電源ケーブルに細工をすることで更に音質の高性能化を図ったりと、ケーブルの性能以外に配線技術でもかなり影響が出ます。
ケーブルの世界も奥が深いですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
意外に深いケーブルの世界を少しでも知って頂けたと思います。
今回紹介したケーブルは有名メーカーから一番ポピュラーなケーブルをピックアップしただけなので、探せばもっといいケーブルもあるでしょう。
ケーブルは結構沼なのでほどほどにしておく事をお勧めします(;^ω^)
最後まで読んでくださってありがとうございました(^▽^)/
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