今回はVemuram Jan Rayの回路について解説していきます。
以前からTimmyのパクリだ!と疑惑のエフェクターですが、その辺も含めて詳しく解説していきます。
回路図の勉強にもなると思うので、回路図を読めるようになりたい!という方にもピッタリな内容だと思います。
※結構バッサリめで行くのでVemuramが好きな方はブラウザバックをおすすめします。
それでは早速解説していきます。
回路図
これが現在で回っている回路図です。
まず突っ込みたいのが、電源をどこに繋ぐか書かれていませんね。
恐らく解析した方の書き忘れだと思います。
まあそれは置いといて、Jan Rayは少し変わった回路だったりします。
エフェクターの回路には型というのがあって、いろんな回路図をみているとだんだん共通点が見えてきて型も分かるようになってきます。
大抵はTS系かケンタ系ですね。回路ではなく音的にデジマートなんかの記事でTS系の最新エフェクター!なんて書いてありますが、実はチューブスクリーマーの回路を少し定数変更しただけだったりします。
話を戻すと、Jan RayはTS系の回路です。
正確には微妙なラインですが、入力と出力のバッファ回路を取っ払って歪みはTS、トーン回路は簡単なコンデンサと抵抗を組み合わせたトーン回路といったところです。
TSの最大の特徴であるミッドブースター回路がトーン回路に代わっているので微妙なラインなんですよね。
一応回路を役割別に分けてみようと思います。
入力部
トゥルーバイパスでよくある入力部の回路です。
1Mはどちらも機械式スイッチ(一般的なフットスイッチ)の切り替え時に出るノイズを軽減する抵抗です。これが無いとバチン!という音が出ます。
C2は最初に通す音域を決めるコンデンサーですね。大きくすると低域が多くなります。
歪み回路
ここがTS系ですね。
オペアンプの負帰還回路で増幅した信号をダイオードでクリッピングするという超ポピュラーな回路です。
市場の半分以上のオーバドライブはこの回路じゃないですかね。
BASS回路
ここはベースのツマミなので一応分けましたが、歪み回路の一部みたいなものでもあります。
50kBの可変抵抗と1μのコンデンサーでアクティブなフィルター回路を形成しています。
10kのトリマーはマルチな役割をしていて、フィルター回路だったり増幅率にも関係してくる結構扱いの難しいトリマーです。
扱いのよく分からないツマミと思われがちですが、ベースツマミを大きくすると増幅率が変わってしまうのでそれを調節するといった認識をしておけば良いと思います。
ベースツマミの抵抗が上がると増幅率が下がるので、トリマーの抵抗値を下げて増幅率を修正、みたいなことを想定していそうです。
一応真ん中の5kΩが一番自然な動作になりますかね。
ちなみにトリマーではなくツマミとして外に出すと外来ノイズの影響を受けるので、ツマミにするなら一工夫必要です。外来ノイズと侮るなかれ、ここのノイズはオペアンプでかなり増幅されます…
トーン、出力回路
トレブルは分けようか迷いましたが、ただのフィルター回路なので一緒にします。
ここもベースと同じく10kBと1.2k、47nでフィルター回路を形成しています。
そのあとの非反転増幅回路を通って10kBで音量が調整されるわけですね。
ですがこれ、設計ミスしています。
言い方は悪くなってしまいますがTimmyの回路を理解していないが故の失敗です。
ここからは疑惑のTimmyと絡めて話していきます。
設計ミスについて
Jan Rayの設計ミスについてはまた今度違う記事にまとめようと思います。ここだけにまとめると文字数が膨大な量になってしまいますからね。
設計ミスの直し方についてもそこで解説していきます。
本題ですが、
VemuramがTimmyの回路をほぼ完全にコピーして基板をモールドして数倍の価格で販売しているのは有名な話です。
Jan Rayの初期型はTimmyを完全に真似ていたので初期のころは比較的軽度な設計ミスに落ち着いてるはずです。
しかし変更点を見るに、オペアンプのデータシートすら読んでない事がわかります。
データシートというのは、言うなれば素子の説明書みたいなものです。
それすら見ないというのは有りえない話ですが、timmyの回路は曲者なので読んでいたとしても気づけるか微妙です。
簡単には回路にどの向きで電気が流れているか、分かっていない故のミスです。
まぁ、要はデータシートをちゃんと見ようという話です。
話は逸れますが、自作すれば市販品を超えられる事なんて多々あります。jan ray然り、自作すれば自分専用のエフェクターが作れてしまうのは比喩抜きで相当メリットだと思いませんか。
音にこだわる人ほど自作の恩恵が得られる事は確かです。
電源部
ここが他のエフェクターとは違う部分です。
R11とD5はエフェクターをオンにした時光るパイロットランプなので、無視して大丈夫です。
V+と書いてあるところが+9Vが来るところで、DCアダプターが接続される部分ですね。
D6は極性を間違えたときに他のパーツが壊れないよう犠牲になってくれるダイオードです。
そしてR8からC6までが電源のノイズを軽減する回路です。
残ったのはR9達です。
これが他と違う部分で分圧回路と言って、その名の通り電圧を分けています。
分圧回路自体はオペアンプを使うエフェクターではかなりの頻度で使われている回路です。
でもJan Rayの分圧回路を見てください。
9.1kと7.5kです。どういうことかというと、4.5Vに分圧されず、少しずれているんです。(なぜ4.5Vなのか、分圧についての理由など詳細は昇圧についての記事で書いています)
だからなんだって話ですが、これだと信号が振幅する中心がずれてしまい、振幅の大きさによってはオペアンプ自体がクリッピングしてしまいます。
ですがこれがJan Rayの、いやTimmyの技術力が光る所なんです
これがTimmyとして出ている回路図ですが電源部の中間電圧がズレていますよね。普通はどちらも10kで合わせるのがセオリーです。
今回は少し触れる程度に留めておきますが、オペアンプ事で異なる正帰還と負帰還のズレを解消するためのテクニックです。
という事は、お察しの通りオペアンプの差し替えはご法度です。
無闇にオペアンプを変えるどころか、同じオペアンプのバラツキ次第では結構悲惨な動作になります。
市販品はMXRのものしかありませんでした。本家の方は販売終了しているんですかね。フリマで7万近くの値段がついていて驚きました。
MXRの方は価格的にコスパは十分ですね。普通の価格設定だと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
回路には著作権みたいなものが無く、エフェクターのようにパクリ合戦みたいなのが続いています。
そんな中いかにして真似されないようにするか、設計者の方は必死で考えたことでしょう。
これをどう受け止めるかは皆さん次第なので私はあえて意見は書きません。
今回はJan Rayでしたが、エフェクター業界ではこういう例は五万とあります。Jan Rayは元になった回路であるTimmyの音色が良かったこと、過剰な値段によるマーケティングが成功して有名になりすぎてしまっただけです。
Jan Rayの回路からは回路の仕組みを学ぶだけでなく、私たち自作erは回路を真似る時に設計者に対する敬意を持って作りたいですね。
私は既製品は参考にする程度でほぼ自分用はオリジナルのエフェクターしか作っていませんが、多少難はあれ先人達の試行錯誤が礎になっていることも確かです。
そんなわけで、エフェクター業界の闇の部分みたいな感じで終わりましたが、自作する上で知っておいて欲しいなと思ったので敢えて書いてみました。
いつかは既製品のコピーにも飽きてくるでしょうから、ぜひオリジナルのエフェクターを作ってみてください。
最後まで読んでいただいてありがとうございました(^▽^)/
コメント
[…] 【徹底解説】Vemuram Jan Rayの自作 回路編工学部出身の筆者がVemuram Jan Rayの回路について解説していきます。疑惑のTimmyとの関係についても触れています。回路の勉強にもなると思うので […]