【回路解説】Stone Grey Distortionの自作

Mad Professor/Stone Grey Distortion

製作編に続きいつもの回路解説編です。面白い歪みの作り方をしているので、オリジナルエフェクターを作る際には良い参考になると思います。

※上級者向けのエフェクターです。また、作っても満足いくものが作れるか微妙です。回路図を眺めるのみに留める事をお勧めします。

回路図

回路図はこんな感じです。よくあるオペアンプの非反転増幅回路の帰還内にクリッピングダイオードを入れて…と思ったらJFETが入っていますね。

その後にロジックICで増幅したり、なかなかユニークな回路です。

入力部・歪み回路

基板に書いてある番号をそのまま写したんですかね。中途半端な番号から始まっています。

まずR8はトゥルーバイパスではほぼ確実に採用されている、切り替え時のノイズを軽減する抵抗です。1MΩだったり2.2MΩだったりします。

そしてC7は2.2nFとずいぶん小さいですね。これはこの回路に入れる低域を決めているコンデンサですが、R3とハイパスフィルタを形成しています。極は154Hzと、がっつりギター帯域を削っています。本当にこれでいいんですかね。歪ませ過ぎによる高調波を抑えるという意図なら、荒っぽい対処法です。

R2は入力保護用ですが、直流電圧からは保護しきれません。しかし過大入力にしては大きすぎ。雑音の元なので数kΩに変更しましょう。音色に関わる部分ではありません。

R3はバイアスをかける抵抗です。

次はオペアンプ周辺回路ですが、ここで一つ注意点です。

https://www.ti.com/jp/lit/ds/symlink/tl051.pdf?ts=1647519475913&ref_url=https%253A%252F%252Fwww.ti.com%252Fproduct%252Fja-jp%252FTL051

TL051のデータシートです。供給電圧の最小値は10Vからです。一方大抵のパワーサプライは9V。まぁ動かない事は無いですが、動作不良が出たからとメーカーに文句を言っても一蹴されること間違いなしです。多分Mad Professorは、お得意のクローン対策として半導体メーカーに9Vでも動く下にバラついたオペアンプを納品させているんだと思います。

しかしTL051は低オフセットな代わりにノイズが大きいというオペアンプですが、このエフェクターにオフセットは関係ないんですよね。

相当ノイズが大きいので、エフェクター等音響機材に使えたものではなく、選択ミスとすら思えます。バッファを付けないならTL072とかのJFET入力のオペアンプに変更すべきでしょう。

C3は発振防止だったり、次段に送る帯域を決めています。好みで変更するのもありです。

そして2N3819というJFETですが、クリッピング素子としてユニークな使い方をしていますね。

実は随分昔にJFETのクリッピング素子としての利用は実験をしておりまして、若干ノウハウじみているので原理のみの解説に留めさせていただきます。

図がNチャンネルJFETの構造になります。回路図ではゲートを6番ピンへ、ドレインとソースを2番ピンに繋いでいます。ゲートはP型半導体で、ソースとドレインはN型半導体です。一方ダイオードはPN接合と言うように、P型半導体とN型半導体を繋げたような構造です。

ということは図を見るとちゃんとPN接合のダイオードのようになっているので、クリッピングダイオードとして機能するのは納得いくと思います。

これが普通のダイオードとどう違うか、色々研究してみた内容なんですが、まぁ簡単に言えばJFETを使うと一般的なシリコンダイオードだったりよりは柔らかい歪みになります。

そんな音色が欲しいならJFETを使うのも良いでしょう。

一応書いておきますが、Zendriveとかで使っているMOS-FETは構造上出来てしまうボディダイオードを利用したもので、今回とはちょっと話が違います。

気になる方は右のカテゴリからZendriveの記事を見てみてください。

Distortionのツマミは1MΩとかなり大きいですね。柔らかい歪みのJFETを使っている事を考えると、守備範囲の広い歪みを作りたかったんでしょうか。

1000/4.7=212.7

なので約213倍の増幅率です。

C1は歪ませる帯域を決めています。

ロジックIC増幅回路

さてここが一番気になるところですね。

まぁあまり突っ込んだ話をし過ぎるのもあれなので、簡単に言うと反転増幅回路です。

オペアンプの反転増幅回路と見た目が似ていますよね。

470/200=2.35

なので一段目は約2.35倍の増幅率です。

R5,C9で増幅する帯域を決めています。

そして左側の回路ですが、なかなかおかしな回路です。

周波数によってかなり増幅率に違いの出る回路となっていて、C5を無視すると微分回路になりますが、R9よりC5が低インピーダンスになる部分(高域)では増幅率が

47nF/100p=470倍

というような感じになり、なんとも高域ばかり増幅する回路です。

私がメーカーの人間なら間違いなく本当にこれでいいと思ったんか、と口出ししますが、そういうコンセプトなんですかね?

あまり耳に痛い音は好きではないので、この辺りはぜひ改造してみるとよさそうです。

一応動作を安定させるには、左側の回路と同じように信号ラインに直列に抵抗を入れると良いと思います。数kΩ~十数kΩといったところでしょうか。10kΩ前後で試してみてください。

トーン回路・出力部

ロジックICの後、C11とR12を通って、C12と50kΩの抵抗で音色を調節しています。C12と50kΩからなるこの回路は発振を抑える回路として知られていますが、歪み回路を考えると必須ですね。前述の通り増幅し過ぎどころか、高域のみをあり得ないぐらい増幅するので相当仕事をしています。

そして謎のC6。なにこれ?あってもなくても変わらないんじゃないの?と思うかもしれませんが、一応変わります。

C6の左側はオペアンプの2番ピンに繋がっていますが、オペアンプの2番ピンからは歪んでおらず、しかもローインピーダンスな信号が出ています。そこに小容量のコンデンサを繋ぐと高域を取り出す形になり、C6の右側はボリュームに繋がっているので、出力直前に原音の高音域をブレンドしているというような回路になります。

本当によく分からない回路ですよね笑

入力でギターの帯域をがっつりカットして高域を非常識なまでに増幅し、発振防止とトーンを兼ねた回路を通して最後は原音の高音域成分をブレンド…

他にもロジックICやらJFETを使ったり、キワモノ全部乗せみたいな印象を受けるのは私だけでしょうか。

まぁそれはそれとして、参考になることも多いので良い勉強にはなると思います。

電源回路

他の回路で既にバレバレですが、SHODの件も含めるとやっぱりMad professorには真っ当な技術者がいるのか疑いたくなってしまいます。

という事で設計者の事が一番分かってしまうと個人的に思っている電源回路を見てみましょう。

まず前提知識として、CMOSロジックICは電源部にかなりのスパイクノイズを与えます。なので今回のような回路では特に電源回路に配慮するのが設計者というものです。

回路をみてみると、お察しですが他と大して変わりませんね。申し訳程度にCRローパスフィルタが入っていますが、これはオペアンプのみの回路でもあって当然です。

寧ろC10はもっと大きくしたいまであります。サイズが許すなら220μF程度を採用してください。

そしてR6,R7の非常識なまでの高抵抗。せめて百k~百数kΩに落とし、それに合わせてコンデンサの容量も1μF~数μFのコンデンサに変更すべきです。

これでオペアンプの方は問題ないノイズ量になりましたが、如何せんロジックICを接続する箇所がお粗末です。

電源回路を強化し、ロジックICのノイズを抑える方法もありますが、ここは繋ぐ箇所をD2の右側にし、そこからCRフィルタを増設することで二経路にしてしまう方が楽でしょう。

オペアンプとロジックICでそれぞれフィルタを設けるという事です。

一応電圧降下を考えてD2は電源とGNDに入れるのが、私の好みです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

なかなか無茶な設計でしたが、反面ユニークな設計が詰め込まれたエフェクターだったという感想です。

実際参考になる点は多く、私の作ったものではここで使われている要素で使っていないものはありません。特にCMOSロジックICは革命的です。まぁ答えを書いてしまっては面白みに欠けるので、自作の醍醐味である試行錯誤をしてみましょう。

最後まで読んでくださってありがとうございました(*^^)

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